5.21山口二郎講演(松山大学)の概要報告

演題:戦後憲法体制の危機をどう打開するか?

*世界のアベ化

 自己愛が強い(自分の意見は常に正しい)。
批判を嫌う、自己を批判するものを敵とみなし、過度に攻撃的になる。
嘘やデマであっても悪びれない。
例えば、「道徳教育において、事柄の本当かウソかはどうでもいい」という。
 政府が事実を覆い隠し、事実を伝えるべきメディアに圧力を加え、事実を隠ぺいする。また、国民に「何が正しいか」押し付ける。
 事実とフィクションの識別をしない「教育」:「江戸のしぐさ」は明治時代以降に「つくられた」虚構だが、これを子供たちに教え込もうとすることは「教育」の道を外す。

*戦後日本の体制

 ポツダム宣言:日本の非軍事化
 ポツダム宣言における、天皇の戦争責任を追及する英国・オランダと、天皇制を残存させようとする米国との妥協の産物が、日本の非軍事化+天皇制の象徴化による温存であった。
 それゆえ、憲法9条の戦争放棄と象徴天皇制とは一つのセット
 日本国憲法、戦後民主制度は押し付けられたものではなく、国民の中にあった民主主義志向を育てるとの意図のもとに考慮され、昭和天皇も進んで「日本の非軍事化=戦争放棄」を積極的に受け入れる意向を示していた。(昨年公刊された書簡)
 国民の大多数にとってポツダム宣言の精神→日本国憲法の基本精神(国民主権、基本的人権の保障、平和主義)は好ましいものであったが、岸元首相(安倍首相がその遺志を継いだという彼の祖父)などA級戦犯や鳩山一郎など公職追放者らにとっては、この戦後体制は憎悪の対象となり、「押し付け憲法」だとして改憲を叫ぶことになる。

*もし、憲法第9条が改定されていたら?

 1960年代ベトナム戦争(アメリカの挑発で仕掛けられた侵略戦争であったことが、のちに判明)への参戦を余儀なくされただろう。(隣国である韓国が参戦を余儀なくされ、多くの若者が犠牲になったばかりではなく、ベトナムで多くの民間人を殺害する加害的役割も果たした事例が物語る)。

活動履歴のページに戻る

*安倍内閣の改憲志向は

安倍首相の劣等感:実践(国際紛争で軍事力を使う)経験がない劣等感 +外務官僚の劣等感:(日本が軍隊を使えない)
 だが、集団的自衛権の行使を今の段階で行うための新たな現実は何もない  日本を取り巻く安全保障環境の悪化も20年前からの継続であり、日本の周辺における安全保障対応を取ってきた。

*立憲主義

 安倍首相「王政のもとで、王の権力を縛るもの」という古い発想だと主張、現代の民主主義では妥当しないとの見方←自民党改憲案では、憲法は国民を縛るものとの発想で書かれている?!
 ⇔民主制のもとでこそ多数の専制を縛る必要性;J.s.ミル,トクヴィル『アメリカの民主主義』等参照
 ex.アメリカのイラク戦争時、ブッシュ大統領による国際法違反のイラク攻撃は、米国民の80%以上の支持を得ていた→結果は、イラクの更なる泥沼化、IS等、フセイン政権よりはるかに凶悪な勢力の台頭を招く。注1)
 為政者が上位の法規範に従うという普遍的原理が「憲法は権力者を縛る」で表現されている。

*安倍政権のもとにおける、「憲法改正」に反対する声が急増していることを最近の各種の世論調査が示している。

*安倍内閣の経済政策の破綻
(残念ながらこの部分は、講演時間が当初の90分から60分に縮減されたことから大半が割愛された。)

 アベノミクスのもとで、日銀の金融緩和等で大企業が巨大利益を得るが、実質賃金が降下を続けるという逆転現象が起きている。

 プロクルステスのベッドの比喩:

 :人間の身丈に合わせてベッドを造るのではなく、ベッドに人間の身丈を合わせようとして、はみ出した部分を切り落とす。震災や原発被害者に対する現内閣の「帰還推奨」方針などに象徴される。
公共的なもの:政府が決める(籾井NHK会長)のではなく、誰もが「おかしい」と思ったら声をあげることができ、それらが結集し公共的なものを形成する。→和辻哲郎(デモと民主主義に関する叙述)

*2015年安保法制反対運動の高揚が示すもの

 民主主義が選挙制度や議会の中に閉じ込められるべきものではないことを実証
 近年の若年層の政治参加:ゆとり教育の成果か
 ゆとり教育の本来の狙い:教師が上から教え込む手法→生徒が自ら何が正しいか考えることから出発する体験を積ませること。
 これはシールズを構成する若者たちの「やさしさと怒り」という気質の源泉となっているのではないか。
 和辻哲郎:日本の伝統には、我慢の文化:長い物には巻かれろ
      西欧の文化:城壁の中にいるものが共同で自らの運命を闘いとる→民主的精神の発揚へ
 今回の野党共闘:市民の政治的な声が野党共闘を後押しした点で、従来試みられた野党間協力とは質が異なる。
 大勢の市民が声を出し、それによって政治が変わるダイナミズムを経験しつつあるがこれは民主主義の重要な指標だ。

西島弁護士の閉会挨拶→

今年の参議院選挙の課題

:投票率をあげること:北海道5区の衆議院補欠選挙からの教訓

(文責 HP担当M.,T 雑駁な箇条書きです)。